熊川哲也に聞く、スクールコンセプト

教育環境について

スタジオ設備についてのこだわりを教えて下さい。
プロフェッショナル・ダンサーにも対応する高さと広さを備え、床にはバレエ用に設計された吸収力のある構造・床素材を使用しており、骨や筋肉などの身体にかかる負担を軽減する作りとなっています。スタジオの広さや高さというものは距離感やバランス感覚を養う上でも非常に重要な要素となります。そして、なによりスタジオに入った瞬間から、バレエの世界を感じられるような空間作りを心がけています。
「ボディアライメント U-Be」を併設している理由を教えて下さい。
生徒の成長に伴う身体のケアや、怪我などに即座に対応できるよう施設を設けました。ダンサーにとって怪我や身体の調整は不可分な関係にありますので、そういった面でもトータルにケアできる体制を整えるために設置しています。また、長年Kバレエ カンパニーの専属トレーナーを務める山下哲哉氏が代表のリジック整骨院とも強い連帯を持っていますので、一貫して治療を行うこともできるようになっています。また、顧問アドバイザーとして関東労災病院スポーツ整形外科に籍をおかれている内山英司先生に就いて頂き、手術を含めた多くの治療を行って頂くなど、万全の体制を整えています。
レッスンは全てバレエピアニストによる生ピアノで行っていますが、その理由を教えて下さい。
ピアニストによる演奏は必須です。バレエは言葉を使わない芸術ですので、音楽と戯れ遊べる感覚を養わないと優れた表現というものは生まれてきません。Kバレエ スクールでは、しっかりとした研修期間を経た、優れた技術を持つピアニストの演奏を全クラスで行っています。音源を使用して一定のリズムだけで演奏されるわけではないので、その時々のシチュエーションに合わせた演奏方法で対応することが可能になり指導の幅も広く、深いものとなります。
Kバレエ スクール独自のクラス内容はありますか。
民族舞踊などを含めたキャラクター・クラス、ヴァリエーション・クラス、パ・ド・ドゥ・クラス、そしてコンテンポラリー・クラスなど様々なクラスを必修クラスとして用意しています。バレエにはたくさんの作品がありますから、クラシックだけを行っていては表現の幅も広がりません。クラシックに基軸を置きながらも、作品が持っている特色を学ぶこともバレエを理解する上で、非常に重要な要素となるのです。
バレエに関しての特別講義も行われているようですが。
バレエや作品に対して様々な面から理解を深めてほしいという思いで、近年、バレエの歴史や作品解説などを行う特別講義を開いています。作品が生まれた時代背景や、文化がどのようにして変化、成長していったかを伝えることによって、生徒たちの意識の向上や表現の幅に厚みを増す手助けになればと思っています。実例としては、舞踊専門の研究家をお呼びして、スライドや動画を使用したバレエ講座を開催したり、バレエダンサーの体型維持には必須ともいえる栄養学についての講義を行ったりしています。

教師陣について

教師はどのようにして選ばれていますか。
Kバレエ スクールでは「Teachers Training Course(T.T.C.)」という厳格化したカリキュラムを持っており、研修をした上で筆記試験、実技試験を行い、知識と実績が十分に蓄えられた者しか教師になれないシステムを取っています。そして、現在Kバレエ スクールの教師の多くは、Kバレエ カンパニーで活躍をしているバレエ・スタッフ、ダンサーです。これは、実際に教えを行う本人自身が一定の基準を満たしたダンサーであること、そしてしっかりとしたキャリアを持っていることによって、生徒への伝わりやすさが断然違うことを実感しているからでもあります。
Kバレエ スクールで使用されているシラバスには熊川さんのどのようなエッセンスが取り入れられているのでしょうか。
私の経験による身体の使い方を盛り込んだ内容となっています。それは「身体を最大限に活用する」ということなのですが、例えば、一般的なバレエ教室では身体を「ねじる」「しぼる」などという感覚の動きは考えられていないと思います。しかし、バレエの動きにおいて身体を「ねじる」動きができるかどうかということは非常に大きな要素となってくるのです。そういった事例が示すように、それらを自分の身体でアウトプットできる人間が身体のことを熟知しカリキュラムを組むことでバレエ教育は成立しますし、またそれこそがバレエを教える上で最重要事項だと言えます。端的に言えば、ダンサーとして現役時代にきちんと踊れない者に教えはできないということなのです。Kバレエ スクールのシラバスは私の経験や発見などをもとに、今の生徒たちにとって何が必要なのかを常に考え、厳しい目を持って内容を更新しています。
最も重要視している教えのエッセンスは何でしょうか。
テクニックだけに強い子、表現だけはできる子といったように何かにだけ傾くのではなく、総合的にレベルが高い子を育成できるように考えています。それは、プロフェッショナル・ダンサーを目指すには、一つだけがずば抜けていても駄目だからです。作品と調和できる総合的な力を持ったダンサーが生まれるように意識しています。
担任制を取っているとのことですが、その利点を教えて下さい。
一つは同じ先生に教わることによって終始一貫したぶれない教育が可能になるという面があります。そしてもう一つは、若い子供たちはある程度先生と密に付き合い、心のケアも含めて見ていきたいという思いがあるからです。更には担任制をとることによって、教師陣の面からも生徒への愛情が深いものとなりますし、責任感も強く持つようになるのです。

学業との両立について

プロを目指していますが、将来の不安から勉強もしっかりやりたいのですが、バレエと学業の両立は可能でしょうか。
これは、小石川校(本校)と恵比寿校、吉祥寺校、横浜校、福岡校(分校)の関係性に関わってくる部分なのですが、基本的に小石川校はプロフェッショナルを本気で目指す生徒のための校舎になっています。他の3校に関しては、人間的な成長を促す情操教育としてバレエを学びたいというニーズに応えるべく設置されていますので、学業とのバランスを考慮、理解したサポート体制をとっています。現代社会は子供においても様々なストレスを抱えることが多いことと思います。学業などの競争社会において自分を見失うときや自信を無くした時に、素敵な音楽に身を預けスタジオで汗をかくことで日々の活力を取り戻すことも大切なことなのではないでしょうか。もちろんプロフェッショナルを目指したい方が、小石川校のオーディションを受けることも可能です。ただ、カリキュラムやクラスのクオリティは各校においても小石川校と遜色のないものとなっています。

スクール・パフォーマンスについて

パフォーマンスを行う意義とはなんでしょうか。
もちろん、生徒たちに一年間の成長を実感させる意味もありますし、なにより子供たちが一番成長するのは、やはり舞台上なのです。スタジオとは異なった環境に身を置くことで普段できることができなかったり、逆に今まで以上の力を出せる自分がいることを発見したりと、舞台上での強さを育てるには一度でも多くの舞台経験が必要となってきます。そういった面も含め、毎年スクール・パフォーマンスを行っています。また、スクール・パフォーマンスは教師陣にとっても重要な意味を持っています。学期末に行っているアセスメントも同様ですが、生徒の成長を促す意味を持つ一方で、教師陣の手腕をみる機会としても機能しています。一年間を通して生徒たちと、どのように向き合ってきたかが目に見えてわかる場所でもありますので、教師陣にとっても責任重大な場面なのです。

バレエ団の付属スクールの利点

Kバレエカンパニーという日本で有数のカンパニー付属のスクールということでの利点というのはありますか。
様々な部分で関わってきますが、一つはKバレエ カンパニーの公演に出演できる可能性がある部分です。カンパニーのリハーサルを間近で見ることができ、同じ空気感の中で学び、プロフェッショナルの舞台に立つということは舞台経験の回数が増えること以上に多くの意味を持つ体験だと思います。また、スクールの教師に関してもキャリアのあるダンサーが教師として指導することが可能になりますし、ヴァリエーション・クラスで踊る演目に関しても実際にカンパニーの公演で、その役を踊った者が教えるといった状況を作り出せます。公演によってはスクール特別価格で公演チケットを販売することもありますし、生徒がカンパニー公演のゲネプロを見学できるような機会もあるでしょう。

Kバレエユースの設立について

Kバレエユースを立ち上げた理由とは何ですか。
これは次世代の子供たちに一つでも多くの舞台経験をさせてあげたいという思いと、生徒からプロフェッショナル・ダンサーへと向かう架け橋を作りたいという思いから始まりました。多くの全幕作品レパートリーを持つKバレエだからこそ貢献できることを考えた時に、カンパニー公演と遜色のない条件で公演を行うことは、団員にとって一生に残る人生の糧となることでしょうし、これからダンサーとして羽ばたく者にとってはプロフェッショナルな世界への良き入り口となってくれると確信しています。

バレエ教育のあり方について

現在の日本のバレエ教育についてどう思いますか。
正直なところ、現在の日本のバレエ教育に辟易している部分はあります。乱立するバレエ教室。実績を伴わない教師による教え。商業主義に則ったコンクール。もちろん現状の中からも世界で活躍するトップ・ダンサーは生まれてはいますが、果たして全体のどれだけの者がプロのダンサーとして活躍していけているのでしょうか。才能を持っているにも関わらず、下手をすると簡単にそういった子供たちが埋もれていってしまい、表舞台まで出てくることが困難になってしまう現状。これはバレエに限ったことではないかもしれませんが、大人が子供の才能を活かせない環境というものは、ひいては文化全体を弱体化することにつながります。才能ある子供たちが、的確に適切な場所に出てこれる環境こそが文化を守る上では必要なのです。それには、その文化に携わる者が共通した意識を持つことが大切です。すなわち、ミクロの視点ではなく、マクロの視点でその文化の将来を見据えることです。例えば、バレエ教室が乱立している日本では「お稽古」のイメージが強くなってしまったバレエを真の文化として残していくためには、しっかりとした国立のバレエ学校を据え、バレエにおける教育のスタンダード型を作り、バレエ教育全体のレベル向上を目指すことが重要だと思います。そういった目標を作ってあげることによって、才能ある子供が自分の力を試したいと思い、競い合う環境作りにも貢献することでしょう。また、教師に関しても確固たる資格と共に、本人の踊りが一定のレベルに達している者が教えを行うべきでしょう。バレエを教える者は、その資格を取ろうとしますから自ずと全体の教育方法も洗練されるはずです。そして、コンクールに関しては商業としての発想を捨て、真に日本におけるバレエ文化の発展を考えたものへと立ち返るべきです。「現在」だけを見るのではなく、ダンサーの将来性に重きを置いた厳正な審査によって、良質な教育を受けられる環境への門戸を開くコンクールが開催されることを願ってやみません。このように、各個人がバラバラにそれぞれの方向を見るのではなく、バレエという高尚な文化を後世に残すためにも、バレエに携わる者全体が一つの未来を見据えて動くべきだと思います。そうすることによって、ひいては日本が世界に誇れるものが、また一つ増えることとなるでしょう。

最後に

保護者の皆様へ伝えたいことはありますか。
昨今はインターネットの普及により様々な情報が簡単に手に入る時代となりました。便利になった一方で、情報が氾濫し、本当に価値のあるものが何なのか、わかり辛くなっているようにも感じています。えてして価値のあるものは見えにくく、表現し辛いものであることが多いのです。保護者の皆様へは、間違った情報に惑わされない厳しい審美眼をお持ち頂き、この情報過多な社会の中でバレエに限らず正しく、価値あるものを子供たちに与えて頂きたいです。これまでKバレエ スクールに関して細かにお話をさせて頂きましたが、そこからKバレエ スクールが持つ教育思想の一貫性と、それを実現するために施設環境を整えていることを感じ取って頂けますと幸いです。Kバレエ スクールは発表会に関してもクオリティは落とさず、しかし参加しやすい価格設定を考え行っております。また、床素材に始まり、ピアニストによる演奏など、それらは目に見えて実感を得られるものではないかもしれませんが、長い年月をかけ身体と心に沁みこみ、強固な土台を作り、明るい将来への布石となってくれるものだと私は確信を持って行っています。未来を担う子供たちに、本当に必要なものとは何なのか、今一度お考え頂けますと幸いです。

introduction

ごあいさつ

コンセプト