レッスンで先生が第一の腕、アン・オー、第四などと指示したのに、番号や名前が一致しないと感じたことはありませんか。腕のポジションは流派によって番号や呼び名が少しずつ異なり、そこを押さえるだけで上達がスムーズになります。本記事では、基本の形から学校ごとの番号対応、体の使い方、覚え方のコツまでを体系的に整理。初級者から指導者まで、今日から使える実践的な知識としてまとめました。
目次
バレエの腕のポジションの名前と番号を徹底ガイド
レッスンで使われる腕のポジションは、準備の腕から第一、第二、第三、第四、第五と段階的に整理されます。日本語の呼び方に加えて、フランス語の伝統的名称であるアン・バー、アン・ナヴァン、ア・ラ・スゴンド、アン・オーなどが併用されます。番号と名前の両方を理解することで、先生によって指示語が変わっても混乱せずに動けます。
一方で、フレンチ・スクール、チェケッティ、ワガノワ、RADなどのメソッド間では、第三や第四の扱いに差があり、番号の指す形が完全一致しないことがあります。この記事では流派差も見渡しながら、対応関係とニュアンスを整理して解説します。
近年の指導では、肩甲骨の安定、肋骨の引き下げ、指先の方向性など、解剖学的に安全で再現性の高い基準が重視されています。単に腕を丸める、上げるという外形だけでなく、背中から腕を生やす感覚や前腕の回旋、手のひらの向きが音楽性にも直結します。名前と番号に加えて、なぜそう置くのかという原理に触れることで、舞台で映えるラインを実現できます。
番号と名前が大切な理由
クラスでは先生の指示が短い時間で次々に出ます。第一から第二へ、第四から第五へといった号令は、移行経路や呼吸のタイミングまで含んだ合図です。番号と名前が一致して頭に入っていれば、動き出しの遅れがなくなり、音楽に遅れず踊れます。
さらに振付の読み解きでも、台本やノートには名称で記されることが多く、動きの再現性を高めます。名称と形を正しく結びつけることは、集中力の節約にもつながり、稽古の効率が上がります。
学校・流派による違いの要点
フレンチ・スクールではブラ・バを準備の腕として明確に置き、デミ・セゴンドを実務で多用します。チェケッティは五つの腕のポジションを番号で整理し、第三や第四を学習段階で積極的に使います。
ワガノワは第四を二種に分け、アラベスクなど全身の配置との連動を重視。RADでは低い第五、高い第五の表現や、試験用の用語整備が特徴です。どの体系も第一と第二、第五は大枠が共通ですが、第三と第四の解釈に差がある点を押さえましょう。
基本用語の整理(日本語とフランス語)
準備の腕はアン・バー(en bas)、第一はアン・ナヴァン(en avant)、第二はア・ラ・スゴンド(à la seconde)、第五はアン・オー(en haut)と呼ばれます。第三は一方を第一、もう一方を第二とする組み合わせで表されることが多いです。
第四にはアン・ナヴァン型とアン・オー型の二種があり、どちらも一方の腕が第五に置かれます。名称を日本語とフランス語で併記して覚えると、レッスンやワークショップで言語が変わっても対応できます。
基本の腕ポジションと対応する番号一覧

ここでは、各ポジションの見た目だけでなく、体の内側で起きていることを要点化して説明します。ラインは指先だけでなく肩甲骨の位置で決まります。首は長く、肘は落とさずに柔らかく、手のひらは空気をたゆませるように。
番号の呼称は流派で差がありますが、一般的な集合知としての対応を下に示します。教室でのルールが別にある場合は、記事の表を土台に先生の指示に合わせて調整してください。
準備(アン・バー/ブラ・バ)の形と役割
両腕を体の前で緩やかな楕円に保ち、指先は太ももの前に近い低さ。手のひらは斜め内向き、肘は軽く外へ。肩は下げ、首と鎖骨を広く保ちます。
この位置は出発点であると同時に到着点でもあり、呼吸の支点です。立ち上がる前の静けさを作るため、握らず、力まず、背中を広げることで、次の第一や第二に音もなく移れる準備ができます。
第一ポジション(アン・ナヴァン)のポイント
みぞおち前に丸い円を抱くように腕を置きます。指先は胸骨前で近づきますが触れません。肘は下がらず、肩は落として首を長く。手のひらは互いに向き合い、親指は目立たせず自然に添えます。
よくある癖は胸を突き出し腕だけで丸を作ること。背中の広がりを先に作り、そこに腕が乗る感覚を覚えると、軽さと存在感が両立します。
第二ポジション(ア・ラ・スゴンド)のポイント
腕を左右に開きますが、真正横よりわずかに前、手先はへその高さからやや上。肘は柔らかい曲線で最も高く、手首は折らない。手のひらはわずかに前に向け、肩は広く下げます。
床に並行ではなく、ごく緩い下りの傾斜をつけると上半身が大きく見えます。指先から光が広がるような意識が舞台映えにつながります。
第三ポジションの使いどころと注意
一方の腕を第一、もう一方を第二に置く組み合わせ。学習段階で方向性やコントラストを学ぶのに有効です。肘の高さと手の向きを左右で崩さず、体幹のねじれを最小に保ちます。
プロの現場では使用頻度は高くありませんが、手順の練習やワルツのポールドブラで有効です。左右差を整えるのにも役立ちます。
第四ポジションのバリエーション(アン・ナヴァン型/アン・オー型)
二種あります。アン・ナヴァン型は一方を第五、もう一方を第一に。アン・オー型は一方を第五、もう一方を第二に置きます。いずれも第五側の肩が上がらないこと、胸が反らないことが要点です。
振付では方向指定とセットで登場することが多く、頭や視線の配り方で印象が大きく変わります。軌道は最短ではなく、楕円を描いて通すと品が出ます。
第五ポジション(アン・オー)の完成形
両腕を頭上に丸く掲げます。肘は耳よりわずかに前、手のひらは斜め内向き。肩は決してすくめず、肋骨を下げて腹圧を保つのが最大のコツです。
腕だけで上げると詰まるので、脇の下を前へ送り、背中の幅を使って持ち上げる意識で。指先に向かう余白と呼吸が、第五の上品さを決めます。
デミ・セゴンド(半第二)の活用
第二と第一の間の高さで、手のひらは斜め上、肘は高いまま。移行の通り道として最重要で、腕の重さを体幹へ返す練習にも向きます。
名称として番号に含めないこともありますが、実務上の価値は非常に高く、初心者ほど丁寧に通すことで全てのポールドブラが洗練します。
流派別の番号対応表とニュアンスの違い

以下の表は、代表的な四つの体系での呼称と番号の対応を概観したものです。教室や教師によって例外やローカルルールがあり得ますが、大枠の比較には有効です。特に第三と第四の扱いに注目してください。
実際に学ぶ際は、必ず所属教室の基準を最優先にしつつ、表で示した相互変換の考え方を身に付けると、ワークショップや留学でも混乱を避けられます。
| 日本語名 | 仏語名 | フレンチ | チェケッティ | ワガノワ | RAD |
|---|---|---|---|---|---|
| 準備の腕 | en bas / bras bas | 準備 | 準備 | 準備 | 低い第五 |
| 第一 | en avant | 第1 | 第1 | 第1 | 第1 |
| 第二 | à la seconde | 第2 | 第2 | 第2 | 第2 |
| 第三 | 3e (組合せ) | 第3 | 第3 | 第3 | 第3(学習用) |
| 第四A | 4e en avant | 第4A | 第4 | 第4A | 第4 en avant |
| 第四B | 4e en haut | 第4B | 第4(用法差) | 第4B | 第4 en haut |
| 第五 | en haut | 第5 | 第5 | 第5 | 第5(高い第五) |
フレンチ・スクールの数え方の特徴
フランス伝統ではブラ・バとデミ・セゴンドの実務性が高く、第四を二種に分けて教える傾向があります。第一は胸前の丸みを重視し、前腕の回旋で手のひらを柔らかく内に向けます。
指先と頭の方向の関係も明確で、視線の運びと呼吸をセットで学ぶ点が舞台での説得力につながります。
チェケッティ・メソッドの整理の利点
チェケッティでは五つの腕のポジションを基幹に据え、第三と第四を学習段階から多用します。第四は第一と第五の組合せを基本とし、ルールが明快で相互変換がしやすいのが利点です。
練習の順序や音楽の取り方も体系化され、初学者でも短期間で整ったラインを作りやすい構成になっています。
ワガノワの二種の第四と全身連動
ワガノワでは第四をアン・ナヴァン型とアン・オー型に明確分化。アラベスクやエポールマンとの連動を重視し、腕単独でなく軸足や頭部との関係で教えます。
背中の広がりと肩甲骨の下制が要で、腕が高くても肋骨を前に押し出さないコントロールを徹底します。
RADの表記と試験での実務
RADでは低い第五、高い第五の表記が明確で、試験シラバスに沿った用語が整備されています。第三は初期学習で使用され、発達段階に応じて段階的に難度を上げます。
指示語が細かく整理されているため、教師と学習者のコミュニケーションがスムーズで、独学者にも親切な体系です。
相互変換の考え方
第四は二種ある、第三は組合せである、準備は番号外の場合がある。この三点を覚えておけば、どの教室でも迷いません。必要なら手帳に自分の教室の呼称対照表をメモしましょう。
場面で不安なら、先生に第四はアン・ナヴァン型ですか、アン・オー型ですかと確認する習慣を付けると齟齬が減ります。
正しいポジションを作るための体の使い方
美しい腕は肩から先の形だけでは成立しません。肩甲骨の下制外旋、肋骨と骨盤の整列、前腕の回外、手指の張力など、いくつかの身体原則が同時に満たされる必要があります。
安全性の面でも、首すくめや腰反りの代償は避けたいところ。以下の要点を意識すれば、負担が減り、ラインが一段階洗練します。
肩甲骨と背中のセット
肩甲骨は下げて外へ広げる下制外旋を基本に。鎖骨を横に長く保ち、脇の下に空間を作ります。胸を張るのではなく、みぞおちを背中へ収めて背幅を先に確保。
この状態で腕を置くと、肩が詰まらず肘を高く保てます。背中の筋群を主動力に使うことで、長時間のレッスンでも疲労が局所に集中しにくくなります。
前腕の回旋と手の向き
第一や第五では前腕の回外が不足しやすく、手のひらが下を向いて重く見えます。二の腕から外にほどく意識で回外し、手のひらはわずかに内向きへ。
手首は折らず、指の付け根から弧を描きます。親指は張らずに他の指と同じカーブに添えると、手先の緊張が消えて優美に映ります。
指先とラインの設計
指先は尖らせず、五本の長さをそろえる意識で。小指側の空間がつぶれると腕全体が痩せて見えます。第二では小指の方向を床へ落とさず、肘が最も高い位置を保ちます。
指先は空間を触れる感覚で、触れた空気の反作用を肘と背中に返すと、腕の重さが体幹へ逃げ、軽やかさが生まれます。
体幹と呼吸の合わせ方
肋骨を下げ、骨盤の上に胸郭を乗せる中立を保つと、第五でも腰が反りません。吸気で背中が広がり、呼気で下腹が穏やかに寄る自然呼吸を維持。
腕の上げ下げは呼吸と逆相にせず、上げるときに背中が広がる吸気を合わせると、動きが軽く流れます。
よくある間違いと即効修正
肩がすくむ、肘が落ちる、手首が折れる、胸が前へ出る。これらは鏡で見つけやすい癖です。肩は耳から遠ざけ、肘は最も高く、手首は前腕と連続の曲線に。
胸はみぞおちを奥へしまい、仙骨を下へ。10秒の壁スクワットに両腕第一を合わせるだけでも、二週間で安定が大きく向上します。
子どもから大人までの覚え方・練習法

腕のポジションは反復で身体化させるのが近道です。ただし数をこなすだけでは形が崩れやすいので、併せて確認ポイントを定めて練習すると効率が上がります。
短時間でも毎日触れる仕組みを作り、鏡や動画を活用して客観視を増やすと定着が早まります。
覚え歌と合言葉で定着
第一は抱える、第二は広げる、第五は包む。短い合言葉を作って動きに意味を持たせます。第四は矢印、片手で示し、もう片手で額の冠と覚えるのも有効。
声に出しながらポールドブラを通すと、呼吸と動作の同期が自然に起こり、舞台で緊張しても形が崩れにくくなります。
鏡と動画の賢い使い方
鏡は正面と斜めを交互に使い、肘の高さと肩の位置を重点確認。週に一度は短い動画を撮り、肘が最も高い瞬間、手首の連続性、肩の静けさをチェックします。
見返しの観点を三つに絞ると、フィードバックが具体化し、短時間でも改善点がクリアになります。
家でできる簡単メニュー
壁背中タッチで肩甲骨の下制を感じ、デミ・セゴンドから第一、第二、第五へ各8カウントで移行。1セット3分で十分です。
イスに座って脇でタオルを軽く挟み、タオルを落とさずにポールドブラを通すと、肩がすくみにくくなります。毎日の小さな積み重ねが形を育てます。
バーとセンターでの組み合わせ暗記
タンデュやロン・ド・ジャンブにポールドブラを必ずセットで付け、番号の移行を体で覚えます。例えば、タンデュ・ドゥヴァンで第一から第二、第五へ。
センターではワルツのリズムで第一、第二、第五を循環させ、第四をアクセントに入れると、移行の滑らかさと呼吸が整います。
クラスや舞台で役立つコミュニケーション術
腕の番号は共通語でありながら、解釈に幅があります。誤解を防ぐ小さな工夫が、稽古の効率と舞台の仕上がりを左右します。
以下のポイントを意識すると、初めての先生や海外の講師とでも滑らかに意思疎通が取れます。
指導者との用語合わせ
レッスン冒頭に、第四は二種のどちらを指しますか、準備は低い第五を含みますか、と短く確認を。ノートに今日の基準を一行メモするだけで、混乱が激減します。
同じ先生でも作品やレベルで指示が変わることがあるため、都度のすり合わせが賢明です。
海外ワークショップでの伝わる言い方
フランス語名と英語名の両方を口に出せると安心です。例えば第一はアン・ナヴァン、英語ならアームス・イン・フロント。第四はアン・ナヴァン型かアン・オー型かを言葉で添えます。
指示が速い場では、手で素早く形を示してから位置へ運ぶと、誤解が最小化されます。
番号が曖昧なときの確認フレーズ
第四は第一と第五の組合せですか、それとも第二と第五ですか。準備は番号に含めますか。短い質問を準備しておくと、場の流れを止めずに確認できます。
間違えたときも、形を直してから目を合わせて小さくうなずくだけで、次からの指示が通りやすくなります。
まとめ
腕のポジションは、準備、第一、第二、第三、第四(二種)、第五が基本。名前は仏語のアン・バー、アン・ナヴァン、ア・ラ・スゴンド、アン・オーが中核で、番号は流派で細部が異なります。
違いの核は第三と第四の解釈にあり、そこを把握すれば相互変換は容易です。体の使い方としては、肩甲骨の下制外旋、肘の高さ、手首の連続性、肋骨のコントロールを柱にしましょう。
覚え方は短い合言葉、鏡と動画の三観点チェック、家練の3分セットが効果的。クラスでは用語合わせのひと言確認が効きます。
番号と名前を軸に、内側の原理と練習の仕組みを結び付ければ、ラインは必ず洗練します。今日から一つずつ実践して、腕で音楽を語れる踊りへ近づいていきましょう。
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